How to
抱え込む人が、仕事を渡せるようになる順番
「自分でやったほうが早い」は、たいてい正しいです。
教えるのに30分、覚えるまで1週間。自分がやれば15分で、間違いもない。1日で見れば、抱えたほうが速い。
問題は、その1日ぶんの正しさを何百回も積み上げた先に何が残るかです。あなたが休むと止まる仕事だけが残ります。休めないので教える時間ができず、教えないのでますます休めなくなります。
ここから出るには、渡す順番を決めます。順番を決めずに渡すから失敗します。
失敗する渡し方
多くの人が、いきなり重い仕事を渡します。自分がいちばん苦しいものを手放したくなるからです。
そして相手が失敗し、フォローに自分の時間が倍かかり、「やっぱり自分でやったほうが早い」という結論に戻ります。この一往復で、次の1年は誰にも渡さなくなります。
渡すのは、軽いものからです。
渡す順番
この順で渡す
- 1. 手順が決まっていて、間違えても被害が小さいもの(検品、記録、在庫確認)
- 2. 手順は決まっているが、判断が少し入るもの(日報、簡単な問い合わせ対応)
- 3. 判断が要るが、失敗しても取り返せるもの(発注の一部、シフトの原案)
- 4. 判断が要って、失敗すると痛いもの(クレーム対応、金額の決裁)
1と2で相手の癖が分かります。ここを飛ばして3から渡すと、相手がどこでつまずくか分からないまま任せることになります。
1日ひとつだけ
全部を渡そうとすると、教える時間が確保できずに終わります。
1日にひとつ。今日は検品、明日は日報。それだけ決めます。
そして重要なのは、渡したらその日はもう自分でやらないことです。横から手を出すと、相手は「結局やってもらえる」と学習します。次から任せられなくなります。
最初の1〜2週間は遅くなる
ここを覚悟しておかないと、3日で戻ります。
教える時間ぶん、確実に遅くなります。閉店が20分遅れる日が出ます。これは失敗ではなく、想定内の支出です。
回収できるのは早くて1か月後です。1週間で判断しないでください。
崩れるのは「忙しい日」
渡す習慣は、忙しい日から消えます。
そして忙しい日が2日続くと、「今週は無理」になり、そのまま元に戻ります。ここが最大の壁です。
対策は2つです。
朝に決める
忙しくなってから考えると、渡さない理由がいくらでも出てきます。朝のうちに「今日は誰に何を渡すか」を決めてしまいます。
空白が見える場所に置く
ホワイトボードの隅に、曜日ごとのマスを7つ書きます。渡したものを一言だけ書く。「検品/澤田」で十分です。
空白が2つ並んでいるのを見るのは、思ったより嫌なものです。その居心地の悪さが、気合いより長持ちします。
やり方が自分と違っても直さない
渡した仕事は、たいてい自分のやり方と違う形で返ってきます。棚の並びが違う、書き方が違う、順番が違う。
結果が許容範囲なら、直さないでください。
直すと、相手は「どうせ直される」と学習します。次から自分で考えなくなり、あなたの確認作業が増えます。渡した意味がなくなります。
直すのは、安全や金銭に関わるときだけにします。
「やらせてもらえない」という言葉
抱え込む人は、自分が親切だと思っています。相手に負担をかけていない、と。
ただ、任されない側から見ると、それは「信用されていない」あるいは「経験を積ませてもらえない」に見えます。若い人ほどそう感じます。
渡すことは、負担をかけることではなく、機会を渡すことでもあります。両方本当なので、片方だけで考えないほうがいい。
まとめ
- 軽いものから渡す。いきなり重い仕事を渡して失敗するのが典型パターン
- 1日ひとつ。渡したらその日は自分でやらない
- 最初の1〜2週間は遅くなる。これは支出であって失敗ではない
- 忙しい日に崩れるので、朝に決めて、空白が見える場所に記録する
- やり方が違っても、結果が許容範囲なら直さない
目標は、売上が伸びることではありません。2日続けて休めることです。そこまで行けば、あとは勝手に回りはじめます。