How to
教えても伝わらないときに、変える1つのこと
聞かれたら答えている。惜しんだことはない。それなのに、何年たっても同じ人が同じことを聞きに来る。
教えることと、答えを言うことを同じものとして扱っていると、これが起きます。
答えを渡すと、その案件は片付きます。ただ、判断の材料は渡っていません。だから次に似た案件が来たとき、また聞きに来ます。
まず、自分の動機を確認する
即答するのは、相手のためだけではありません。
答えられる自分は気持ちがいい。三十年の経験が役に立っている実感がある。そこを認めておかないと、質問を返すやり方は続きません。
教える側の満足を少し手放す作業になります。
1. 「お前ならどうする」を1回挟む
やることはこれだけです。「どうしましょう」に対して、答える前に一度返します。
- 「君ならどうする」
- 「案は何かある?」
- 「どこで迷ってる?」
最初の数回は、意地悪をしている気分になります。相手も戸惑います。答えを持っている人が出さないのは、そう見えるからです。
4回目くらいから、相手が先に案を持ってくるようになります。
「担当で止まりそうなので、部長決裁に上げようと思うんですが、どうですか」
ここまで来ると、こちらは「それでいい」と言うだけです。かかる時間は、答えを言っていたときと変わりません。
2. 急ぎかどうかを先に宣言する
ここが最大の崩れどころです。
期末や繁忙期に、質問を返す余裕がなくなります。全部に即答する。そして翌月に戻そうとすると、相手のほうが先に聞き方を戻していて、案を持ってこなくなっています。1か月で崩れます。
原因は、急ぎの案件でも質問を返そうとして、無理だから全部やめたことにあります。
そこで、最初に宣言します。
2つの言い方を用意する
急ぐとき:「これは急ぎだから、答えを言う」
急がないとき:「これは考えてきて」
どちらなのかを先に伝えると、相手も、いま試されているのか単に急いでいるのかが分かります。相手が混乱しないので、方針として崩れません。
3. 案が間違っていたときの返し方
持ってきた案が的外れだったとき、否定して正解を言うと、次から持ってこなくなります。
返すのは、判断の材料のほうです。
- 「その方向だと、◯◯はどうなる?」
- 「前に似た件で、△△で引っかかったことがある」
- 「先方の担当者の立場で考えると、どう見える?」
正解を出すのではなく、抜けている観点を1つ足します。2回目に持ってくる案が変わっていれば、それで機能しています。
副次的な効果
このやり方を続けると、育つのは部下だけではありません。
質問を返して、相手の案に材料を足す作業を繰り返していると、自分がどう判断しているかが言語化されていきます。
三十年の経験は、たいてい本人の頭のなかで暗黙のままです。異動や引き継ぎで、それを紙に書こうとすると、多くの人は書けません。日々の受け答えのなかで整理されていた人だけが書けます。
まとめ
- 答えを渡すと案件は片付くが、判断の材料は渡っていない
- 即答が気持ちいいことを、先に認める
- 答える前に1回だけ「君ならどうする」を挟む
- 急ぎかどうかを先に宣言する。これをしないと繁忙期で崩れる
- 案が的外れでも否定しない。抜けている観点を1つ足す
数か月で劇的に変わるものではありません。自分で判断して持ってくる回数が、少し増える程度です。