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「ザ・ゴール」シリーズを、どれから読むか
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エリヤフ・ゴールドラットの本は、ほとんどが小説の形をしています。
理論書ではなく、困っている人が出てきて、質問され、考えて、直していく話です。だから読めます。逆に言うと、結論だけ知りたい人には長い。
日本語で読めるものが何冊もあるので、どれが自分の仕事に近いかで選んでください。順番に全部読む必要はありません。
選び方の早見
| いま困っていること | 読む本 |
|---|---|
| 工程や作業の流れが詰まっている | ザ・ゴール |
| プロジェクトが必ず遅れる | クリティカルチェーン |
| 製造以外の問題に応用したい | ザ・ゴール2 思考プロセス |
| コスト削減の議論がかみ合わない | コストに縛られるな! |
| 長い本を読む体力がない | コミック版 |
全部読むなら、この順番
状況で選べるならそれがいちばんですが、順番を先に知りたい人もいると思います。理解が積み上がる順に並べると、こうなります。
- ザ・ゴール … 制約という考え方の土台。ここを飛ばすと、以降が全部あいまいになります
- クリティカルチェーン … 同じ考え方をプロジェクトに当てる。工場を持たない仕事の人は、ここでやっと自分の話になります
- ザ・ゴール2 思考プロセス … 製造以外の問題へ広げる。1冊目の用語が前提なので、ここが3番目
- ザ・チョイス … 手法ではなく、その背後の考え方。手法を知らないまま読むと、抽象的すぎて手がかりがありません
- コストに縛られるな! … 会計と意思決定の話。必要になったときでよい
刊行順とは違います
刊行された順に読む必要はありません。上の並びは、前の巻で出た考え方を、次の巻が前提にしている度合いで決めています。
特に『ザ・チョイス』を先に読むと、たいてい失敗します。抽象度がいちばん高い巻なので、具体的な手法を見たあとでないと引っかかりがありません。
途中でやめる前提なら
- 1冊で終えるなら … ザ・ゴール。というより、1冊目を読まずに他へ行く意味がありません
- 2冊で終えるなら … ザ・ゴール+クリティカルチェーン。製造業以外の人は、この2冊で実務に届きます
- 3冊目以降 … 必要が出てから。全巻読破を目的にすると、途中で止まって何も残りません
なお、長い本を読む体力がない時期なら、コミック版から入って構いません。順番の話より、1冊目にたどり着くことのほうが先です。
1冊目は、これで足ります
ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
こんな夜に。各部署が頑張っているのに全体が遅いとき。改善しているのに数字が良くならないとき。
3か月で閉鎖を通告された工場を立て直す小説です。制約理論(TOC)の入門にあたります。全体の出力はいちばん遅い1か所で決まること、部分最適が全体を悪化させることが、理屈ではなく物語のなかで納得できます。ここだけ読めば、考え方の核は手に入ります。
合わないかもしれない人:500ページ超で、前半は工場の描写が続きます。工場勤務でない人は、最初の100ページで飽きることがあります。
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ザ・ゴール コミック版
こんな夜に。本編を買ったが積んでいるとき。通勤で読み切りたいとき。部下に読ませたいとき。
本編の筋を追いながら、考え方の要点だけを短時間で押さえられます。舞台が日本の工場に置き換えられているので、原著の描写でつまずいた人にはこちらのほうが入りやすい。
合わないかもしれない人:当然ながら情報は削られています。本気で使うなら、あとで本編を読んでください。
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プロジェクトが遅れるなら、こちら
工場より、こちらのほうが刺さる人が多いかもしれません。プロジェクトはなぜ必ず遅れるのかを扱った巻です。
「ザ・ゴール」シリーズ クリティカルチェーン
こんな夜に。各担当が期限を守っているのに、プロジェクト全体は遅れるとき。見積もりに余裕を積んでいるのに間に合わないとき。
各工程に余裕(サバ)を持たせると、その余裕は使い切られて全体には残らない。だから余裕を個人ではなく全体で持つ、という考え方です。開発、建設、システム導入など、期限のある仕事なら業種を問わず当てはまります。日程の引き方が変わります。
合わないかもしれない人:実際に導入するには、周囲の合意が要ります。1人で読んで1人でやると、周りからは「見積もりが甘い人」に見えることがあります。
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製造以外に応用したいなら
ザ・ゴール2 思考プロセス
こんな夜に。1作目を読んで、自分の職場にどう当てはめるか分からなかったとき。
前作の主人公が、工場ではなく事業全体の問題に取り組みます。何を変えるか、何に変えるか、どうやって変えるか。この3つを順に詰めていく思考の手順が主題なので、事務や企画の人にはこちらのほうが直接効きます。
合わないかもしれない人:1作目を読んでいないと、登場人物と前提が分かりません。順番に読んでください。
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ゴールドラット博士のコストに縛られるな!
こんな夜に。部門ごとのコスト削減が、全社では効いていないと感じるとき。原価計算の数字で議論がかみ合わないとき。
部門別に原価を割り振って管理する考え方の限界を扱います。小説ではなく解説寄りなので、上の巻より読みやすい人もいます。経理や管理会計と話すときの語彙が増えます。
合わないかもしれない人:既存の原価計算を否定する内容なので、経理部門とそのまま議論すると角が立ちます。
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手法ではなく、考え方のほうを知りたいなら
「ザ・ゴール」シリーズ ザ・チョイス 複雑さに惑わされるな!
こんな夜に。制約理論の手順は分かったが、その背後にある考え方が掴めないとき。目の前の問題が複雑すぎて、手がつけられないと感じるとき。
著者と娘の対話で進みます。物事は本質的にシンプルである、という立場から、複雑に見える問題をどう解くかを扱います。工場やプロジェクトといった具体的な題材から離れ、考え方そのものが主題になっている巻です。
合わないかもしれない人:他の巻を読んでいないと、前提が共有されておらず入りにくい。最初の1冊にはしないでください。
そのほか
『チェンジ・ザ・ルール!』はITシステム導入がテーマの巻です。先に上の巻を読んでいないと入りにくいので、順番の後ろに置いています。コミック版もあります。
TOCと、トヨタ生産方式の関係
この2つはよく並べて語られます。目指す方向は近く、力点が違います。
- TOCは、制約を1か所特定して、そこに集中する。どこを見るかを決める技術
- ジャストインタイムは、必要なものを必要なときに必要なだけ作る。流れそのものを整える技術
順番としては、ザ・ゴールで「1か所に絞る」感覚を掴んでから、トヨタ側を読むと混乱しません。逆から入ると、改善項目が増えすぎて手が止まります。
読んだあとにやってはいけないこと
- 用語から入る。「これがボトルネックです」と名指しすると、相手が身構えます。数字を見せるほうが早い
- 全工程を同時に改善しようとする。本にそう書いていないのに、なぜかそうなります
- 指標を変えないまま手法だけ入れる。稼働率を測り続けている限り、必ず元に戻ります
読んだ翌週に変えるなら、指標を1つだけです。