Story

飲料メーカーの課長が、売上が落ちた原因を、3段階で割って絞った話

飲料メーカー 課長・40代前半 キャリア

月次会議で、課長の黒川は、売上の資料を前に、聞いた。

「先月の売上が、落ちた。原因は、何だと思う」

「天候が、悪かったのでは」

「競合が、新商品を出しましたよね」

「営業の、訪問回数が、減っていました」

意見は、どれも、もっともだった。黒川は、どれも否定できなかった。

会議は、四十分続いて、何も決まらずに終わった。


席に戻ってから、黒川は、紙を出した。

売上は、客数と、客単価に分かれる。書いてみると、単純なことだった。

その夜のうちに、数字を見た。客単価は、ほとんど変わっていなかった。落ちていたのは、客数のほうだった。

さらに、客数を分けた。新規と、既存。

新規は、前年と同じだった。既存の取引先の、発注回数が、減っていた。


翌週の会議で、黒川は、紙を、そのまま見せた。

「売上が落ちたのは、客単価ではなく、客数だ。客数のなかで、新規は変わっていない。減ったのは、既存の取引先の、発注の回数だ」

会議室が、静かになった。

「天候や、競合の話は、まだ、確かめていない。ただ、先に見るべきなのは、既存の取引先の、発注が減った理由だ」

一人が、言った。

「そういえば、担当が変わった先が、いくつかあります」

黒川は、その場で、担当替えのあった取引先の、リストを作らせた。


三週間後、リストの二十社のうち、十一社で、発注が減っていた。

担当が変わるときの、引き継ぎに、抜けがあった。

黒川は、引き継ぎの書式を、一枚作った。それで、全部が戻ったわけではなかった。ただ、手を付ける場所が、見えていた。

分けなければ、天候の話を、続けていたかもしれない。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。