Story
工作機械商社の課長が、評価の基準を面談の前に渡して、初めて部下が納得した話
評価面談で、部下の大城が、言った。
「こんなに、頑張ったのに」
課長の宮本は、言葉に詰まった。
大城が、頑張っていたのは、本当だった。残業も、休日の対応もあった。ただ、結果は、基準に届いていなかった。
「頑張りは、見ていた」
宮本は、そう言った。それ以上、何を言えばいいのか、分からなかった。
面談のあと、宮本は、評価シートを見直した。
基準の欄に、書いてあった。「顧客開拓を、積極的に行う」
積極的とは、何件のことなのか。自分でも、答えられなかった。
大城が、「聞いていない」と感じたのは、無理もなかった。基準が、そもそも、決まっていなかった。
翌期の初め、宮本は、基準を書き直した。
「新規の訪問を、月八件以上。そのうち、見積もりまで進むものを、年間六件以上」
数字で書けるものは、数字にした。書けないものは、状態で書いた。
期初の面談で、一人ずつ、渡した。
大城は、紙を見て、聞いた。
「月八件は、いまの自分の件数より、少し多いです」
「そうだ。無理なら、いま言ってくれ」
大城は、少し考えて、答えた。
「やってみます。でも、見積もりまでの件数は、同行をお願いしたいです」
宮本は、手帳に、同行の日を二つ書いた。
三か月目の中間面談で、宮本は、基準に対する現在地を、伝えた。
「訪問は、月七件。見積もりまでは、二件。あと、半期で、四件が必要だ」
大城は、頷いた。
「見積もりまでの件数が、足りませんね」
「そうだ。何が、ボトルネックだと思う」
大城は、自分の言葉で、答えた。
期末の面談で、結果は、基準に届いていた。宮本は、頑張りに、一言だけ添えた。
「同行の日に、準備してきた資料が、良かった」
大城は、小さく、礼を言った。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。