Story
生命保険の支社長が、会議で決まったことの担当を、一人に書いた話
月曜の会議で、新しい施策が決まった。
お客様向けの、フォロー連絡を、月に一度行う。全員が、頷いた。
三週間後、支社長の長谷川は、状況を聞いた。
「フォロー連絡の件、進んでいるか」
誰も、答えなかった。
「誰が、やることになっていたんだ」
「……全員で、だったと思います」
長谷川は、その夜、議事録を読み返した。
「全員で実施」と、書いてあった。期限は、なかった。完了の定義も、なかった。
誰も、悪くなかった。ただ、誰のものにもなっていなかった。
翌月の会議で、長谷川は、決まったことを、四行で書くことにした。
判断者。担当者。期限。終わった状態。
最初に書いたのは、顧客アンケートの件だった。
判断者は、長谷川。担当者は、若手の佐野。期限は、十一月十五日。終わった状態は、既存のお客様三十件に、依頼文を送付済み。
佐野は、その紙を見て、聞いた。
「依頼文の文面は、私が決めていいんですか」
「決めていい。迷ったら、私に聞け。ただし、お客様の名前を使う場合だけ、先に見せてくれ」
長谷川は、任せる範囲を、口で足した。
十一月の十日、佐野が、席に来た。
「依頼文、三十件、送りました」
「ありがとう」
それだけで、話は終わった。
長谷川は、紙を、もう一度見た。四行が、全部埋まっていた。
次の会議から、四行は、全員の分を書いた。誰かが、「これ、誰の担当でしたっけ」と聞くことは、なくなった。
ただ、一つだけ、問題が残った。担当を一人にすると、その人が、忙しいときに止まる。
長谷川は、そこを、次の課題として、手帳に書いた。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。