書店の店長が、ねんきん定期便を、三か所だけ読んだ話
開けずに、引き出しに、溜めていた。開けたら、思ったより、分かることがあった。
読むStory
工場長の山本は、書店の、投資の棚の前で、立ち止まっていた。
会社の業績が、少し、落ちていた。来年のボーナスは、出ないかもしれない。
先のことが、不安だった。
何か、増やす方法を、知らないといけない気がした。
手に取った本を、棚に、戻した。
その代わり、帰り道で、ふと、考えた。
もし、来月から、収入が、止まったら。
何か月、暮らせるのだろう。
答えが、出なかった。
その夜、山本は、家計簿アプリを、開いた。
直近三か月の、出ていくお金を、並べた。
家賃、ローン。食費。光熱費。子どもの学費。保険。
毎月、平均で、三十二万円。
趣味や、外食の分は、別に、見た。五万円ほど、削れる。
山本は、電卓を、叩いた。
三か月分で、九十六万円。六か月分で、百九十二万円。
貯金の口座を、確認した。八十万円ほどだった。
足りない、と思った。だが、数字を見て、少し、落ち着いた。
何が、足りないのか、分かったからだった。
翌日、山本は、妻と、話した。
「会社が、不安なんだ。先に、作っておきたい」
「何を」
「収入が、止まったときの、生活費」
妻は、少し、驚いた顔を、した。
「いくら、あれば、安心?」
「まず、三か月分。九十六万円」
「今、八十万円くらい、あるわよね」
「あと、十六万円。それを、今年の目標にしたい」
妻は、頷いた。
「毎月、一万円ずつ、積み立てましょう。別の口座で」
山本は、予備資金専用の口座を、作った。
使う場面を、決めた。収入が、止まったとき。それ以外は、使わない。
手帳に、書いた。
八十万円。目標、九十六万円。十六か月。
数字は、小さかった。だが、先の不安が、少し、形に、なった。
三か月後、会社の、人員整理の話が、出た。
山本は、動揺した。それでも、以前よりは、落ち着いていた。
家計の数字が、手元に、あった。
三か月は、暮らせる。その間に、考えられる。
帰り道の書店で、山本は、投資の棚の前を、通り過ぎた。
いつか、勉強する。だが、今ではなかった。
先に、現金が、あった。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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