自動車整備工場の工場長が、先の不安の前に、生活費の三か月分を数えた話
投資の勉強を始める前に、突然収入が止まった場合の、数字を出してみた。
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店長の川上は、自宅の、引き出しを、開けた。
封筒が、何通も、重なっていた。
ねんきん定期便。誕生月に、毎年、届く。開けずに、しまっていた。
見るのが、怖かった。
数字を見ると、老後が、不安になる。そう思って、先延ばしにしていた。
その夜、妻が、言った。
「そろそろ、見ておいたほうが、いいんじゃない」
川上は、頷いた。
最新の一通を、取り出した。
封を、開けた。
思っていたより、薄い、紙が、出てきた。
最初に、加入期間を、見た。
二十二歳から、今まで。途中、転職の時期も、ちゃんと、記録されていた。
抜けは、なかった。
次に、納付状況を、見た。
未納は、なかった。
川上は、少し、ほっとした。
それから、見込額を、見た。
数字は、思っていたより、少し、少なかった。
川上は、息を、吐いた。
説明欄を、読んだ。今の条件が、続いた場合の、見込み。働き方や、受け取りを始める年齢で、変わる。
数字は、決まった未来では、なかった。
翌日、川上は、見込額を、手帳に、写した。
家の、毎月の生活費も、並べた。
足りない分が、見えた。
妻が、聞いた。
「どうする?」
「まず、できることを、一つ、決めよう」
川上は、書いた。
働く年数を、考える。貯蓄の積み立てを、増やす。
「どっちも、すぐには、決められないな」
「それでも、見えたのは、良かったわね」
川上は、頷いた。
次の誕生月、また、定期便が、届いた。
川上は、その週のうちに、開いた。
三か所を、確認して、手帳に、三行、書いた。
去年と、比べた。数字は、わずかに、上がっていた。
店に、行くと、アルバイトの、若い店員が、聞いた。
「店長、何か、いいこと、ありました?」
「去年より、少し、見通しが、良くなった」
「何のですか」
「それは、また、今度」
川上は、笑って、レジの、箱を、運んだ。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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