ゲーム開発会社のディレクターが、同じ遅れを三つのプロジェクトで繰り返した話
打ち上げは、毎回やった。振り返りは、一度もやらなかった。
読むStory
試作機の評価で、不具合が見つかった。
プロジェクトが終わったあとの振り返りで、課長の石井は、会議室のホワイトボードに、一行、書いた。
「確認が抜けたのは、誰か」
部下たちは、黙った。
石井は、続けた。
「責めるつもりはない。事実を、知りたいだけだ」
数秒の沈黙のあと、若手の中村が、小さな声で言った。
「……私の、確認でした」
石井は、頷いた。
「分かった。次は、気をつけてくれ」
次の週から、報告が、減った。
中村は、以前のように、途中の経過を、石井に見せなくなった。
石井が聞くと、「大丈夫です」と、短く答えた。
ほかの部下たちも、会議で、発言が少なくなった。
石井は、原因が、分からなかった。
ある日、同僚の課長が、言った。
「石井さんのところは、振り返りで、名前を出したと聞いたよ」
石井は、思い当たった。
「事実を聞いただけだ」
同僚は、少し困った顔で、言った。
「聞かれた側は、そうは、受け取らないかもしれないね」
その夜、石井は、ホワイトボードの写真を、見返した。
「確認が抜けたのは、誰か」
「誰か」という、二文字が、そこにあった。
翌月、別のプロジェクトが終わった。
石井は、会議室で、最初に、言った。
「この場は、誰の責任かを決める場ではない。次に同じことを起こさない仕組みを探す場だ。最初に、私の失敗を話す」
石井は、ホワイトボードに、書いた。
「私の判断が、一日、遅れた」
次の質問を、石井は、変えた。
「確認が、抜けたのは、どの場面だったか。そのとき、確認する仕組みは、あったか」
中村が、少し間を置いてから、答えた。
「チェックリストが、ありませんでした」
石井は、ホワイトボードに、書いた。
「確認のチェックリストが、なかった」
名前は、書かなかった。
その週のうちに、石井は、チェックリストの案を、中村に、頼んだ。
「作ってほしい。経験した人が、いちばん、分かる」
中村は、少し驚いた顔をして、頷いた。
翌週から、中村は、途中の経過を、また、見せに来るようになった。
石井は、その理由を、はっきりとは、聞かなかった。
聞かなくても、よかった。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
Stories
時間の話を先に並べています。
打ち上げは、毎回やった。振り返りは、一度もやらなかった。
読む任せたはずだった。毎日、席の後ろを通っていた。
読む全部を速くした。全体は、まったく速くならなかった。
読む自分でやったほうが早い。それはたぶん、合っていた。
読む二十件、と思うと、最初の一件で手が止まる。
読む全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読む五百円払えば、それで済む。そういう顔が、増えた。
読む悪い報告は、いつも、夕方に来る。
読む悩みのテーマ