悩みのテーマ プロジェクトの振り返り

Story

電機メーカーの課長が、振り返りで名前を出して、次の週から報告が減った話

電機メーカー 課長・40代前半 時間

試作機の評価で、不具合が見つかった。

プロジェクトが終わったあとの振り返りで、課長の石井は、会議室のホワイトボードに、一行、書いた。

「確認が抜けたのは、誰か」

部下たちは、黙った。

石井は、続けた。

「責めるつもりはない。事実を、知りたいだけだ」

数秒の沈黙のあと、若手の中村が、小さな声で言った。

「……私の、確認でした」

石井は、頷いた。

「分かった。次は、気をつけてくれ」


次の週から、報告が、減った。

中村は、以前のように、途中の経過を、石井に見せなくなった。

石井が聞くと、「大丈夫です」と、短く答えた。

ほかの部下たちも、会議で、発言が少なくなった。

石井は、原因が、分からなかった。

ある日、同僚の課長が、言った。

「石井さんのところは、振り返りで、名前を出したと聞いたよ」

石井は、思い当たった。

「事実を聞いただけだ」

同僚は、少し困った顔で、言った。

「聞かれた側は、そうは、受け取らないかもしれないね」


その夜、石井は、ホワイトボードの写真を、見返した。

「確認が抜けたのは、誰か」

「誰か」という、二文字が、そこにあった。

翌月、別のプロジェクトが終わった。

石井は、会議室で、最初に、言った。

「この場は、誰の責任かを決める場ではない。次に同じことを起こさない仕組みを探す場だ。最初に、私の失敗を話す」

石井は、ホワイトボードに、書いた。

「私の判断が、一日、遅れた」


次の質問を、石井は、変えた。

「確認が、抜けたのは、どの場面だったか。そのとき、確認する仕組みは、あったか」

中村が、少し間を置いてから、答えた。

「チェックリストが、ありませんでした」

石井は、ホワイトボードに、書いた。

「確認のチェックリストが、なかった」

名前は、書かなかった。


その週のうちに、石井は、チェックリストの案を、中村に、頼んだ。

「作ってほしい。経験した人が、いちばん、分かる」

中村は、少し驚いた顔をして、頷いた。

翌週から、中村は、途中の経過を、また、見せに来るようになった。

石井は、その理由を、はっきりとは、聞かなかった。

聞かなくても、よかった。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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