悩みのテーマ 期待と裏切り・期待のズレ

Story

復唱してもらった課長が、頭の中の完成形が違うと、その場で気づいた話

広告制作会社 ディレクター課長・40代前半 人間関係

広告制作会社の、ディレクター課長、石川は、部下の、山下に、キャッチコピーの案出しを、頼んだ。

「三つくらい、考えてほしい。ターゲットは、三十代の、会社員」

山下は、はっきり、答えた。

「分かりました」

石川は、安心した。

三日後、案が、届いた。

石川は、がっかりした。

どれも、若者向けの、軽い言葉だった。


石川は、考えた。

山下は、聞いていなかったのか。

いや、「分かりました」と、言った。

分かった、つもりだったのだ。

同じ言葉でも、頭の中に、描くものが、違う。

石川は、ベテランの、先輩に、相談した。

先輩は、言った。

「言い直してもらえ」


次の、依頼の時、石川は、言った。

「念のため、私の説明が、足りなかったかもしれないので、やることを、そちらの言葉で、教えてもらえますか」

山下は、少し、考えてから、言った。

「三十代の、会社員向けの、ええと、少し、おしゃれな、トーンで」

石川は、そこで、気づいた。

自分が、頭に描いていたのは、疲れた会社員に、寄り添う、静かなトーンだった。

「おしゃれ、ではなく、疲れた夜に、効く、言葉を、考えてほしい」

山下は、メモを、書き直した。


出来上がった案は、狙い通りだった。

石川は、山下に、言った。

「確認に、付き合ってくれて、ありがとう」

山下は、笑った。

「助かりました。ここで、ズレに気づかないと、三日後に、やり直しですから」

石川は、手帳に、書いた。

分かりました、は、確認ではない。

その下に、足した。

言い直してもらうと、ズレが見える。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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