地方新聞社のデスクが、職務経歴書を一晩で書いてみた話
辞めるつもりはなかった。書けるかどうかを、知りたかっただけだった。
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課長の木下は、休日の夜、ネットで、副業の記事を、読んでいた。
自分の、設計の知識を、小さな案件で、使えないだろうか。
収入も、少しは、増える。何より、会社の外で、通用するか、試したかった。
だが、すぐに、始めようとは、思わなかった。
まず、確認だ。
翌日、木下は、社内のポータルで、就業規則を、開いた。
副業についての、項目を、探した。
許可制、と書いてあった。事前に、人事に、届け出る。会社の事業と競合しない、業務に限る。勤務時間外に、行う。
木下は、メモを、取った。
許可の手続き。申請書の、様式。
人事に、聞くことを、五つ、書き出した。
三日後、木下は、人事の、担当者に、会った。
「設計の、スキルを、活かした、副業を、考えています」
担当者は、規則を、確認しながら、説明した。
「申請書に、内容と、時間と、収入の見込みを、記入してください。競合の、確認は、こちらで行います」
「会社の備品や、情報は、一切、使わないつもりです」
「それが、いちばん、大事です」
木下は、頷いた。
「税金は、どうなりますか」
「そこは、私たちは、答えられません。税務署か、税理士の、先生に、確認してください」
木下は、税務署の、相談窓口に、電話した。
副業の収入が、一定の金額を、超えたら、確定申告の、手続きが、必要になる場合がある。詳しくは、収入の種類と、金額による。
メモに、書いた。
次に、時間を、考えた。
週に、三時間。土曜の午前。それ以上は、やらない。
家族にも、話した。
「本業が、疎かになったら、やめる」
妻は、頷いた。
申請書を、提出して、二週間後、許可が、おりた。
木下は、土曜の午前、小さな案件を、始めた。
最初は、慣れない作業だった。だが、三回目の、納品のとき、依頼主が、礼を、言った。
「分かりやすい資料でした」
木下は、少し、胸が、熱くなった。
半年後、木下は、手帳に、書いた。
始める前の確認が、いちばん、長く効いた。
就業規則。許可。競業と情報。時間と体調。税金。
どれか一つでも、飛ばしていたら、今の安心は、なかった。
土曜の、副業の時間は、本業にも、いい影響を、与えていた。
木下は、そう、感じていた。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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