悩みのテーマ やる気・続かない 関連 夜も頭から離れない・休めない・切り替え

Story

製紙会社の係長が、同期の昇進の知らせを聞いて、物差しを書き直した話

製紙会社 係長・40代後半 やる気

同期の高橋が、課長に昇進した。

係長の田村は、朝礼の掲示で、それを知った。

おめでとう、と声をかけた。笑顔は、つくれた。

席に戻ると、手が、動かなかった。

同じ年に入社した。同じような仕事を、してきた。そう思っていた。


その夜、田村は、コンビニの駐車場で、車の中に、座っていた。

家に帰る気に、なれなかった。

スマホで、高橋の昇進を祝う書き込みを、眺めた。いいね、が、並んでいた。

見るほど、胸が、重くなった。

ふと、先輩の言葉を、思い出した。

比べる相手を、変えてみろ。


翌日、田村は、ノートを開いた。

一年前の、自分。今の、自分。

一年前、できなかったこと。新人教育の担当。月次の原価報告。ラインの改善提案。

どれも、今は、できていた。

書き出すと、五つあった。

田村は、少し、息を吐いた。


次に、物差しを、書いた。

自分が、大事にしたいこと。

家族と、夕食を食べる時間。現場の人と、信頼で働くこと。専門の、製紙工程を、深めること。

三つ。

その物差しで、今の自分を、見た。

夕食は、週に五日、食べられている。現場の信頼は、悪くない。専門は、まだ、浅い。

課長になれなかったことは、物差しの、どこにも、なかった。


数日後、高橋が、田村を、昼食に、誘った。

「正直、課長は、重いよ。毎晩、会議だ」

高橋は、苦笑いして、言った。

「お前の現場の、あのやり方が、羨ましい。どうやって、皆に、慕われてるんだ」

田村は、意外な顔を、した。

羨ましい相手が、自分の、何かを、羨ましがっていた。

「雑談を、朝、五分、するだけだ」

高橋は、メモを、取った。


その夜、田村は、手帳に、書いた。

比べる相手は、一年前の自分。物差しは、自分で選ぶ。

その下に、小さく、足した。

高橋の、報告の早さは、真似したい。

悔しさが、消えたわけではなかった。

それでも、胸の重さは、少しだけ、材料に、変わっていた。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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