悩みのテーマ やる気・続かない 関連 評価の伝え方・後輩の育て方・成長

Story

検査会社の係長が、仕事を少しだけ楽しくするために、作業時間をはかった話

検査会社 係長・40代後半 やる気

係長の古川は、検査室の窓際で、缶コーヒーを、開けた。

二十年、同じ種類の検査を、やっている。

楽しいか、と聞かれたら、答えに困る。

つまらないわけではない。ただ、何も、感じない。


その夜、古川は、家で、転職サイトを、開いた。

何を、探しているのか、自分でも、分からなかった。

画面を、閉じた。

翌朝、検査室で、ふと、思った。この作業は、何分、かかっているのだろう。

ストップウォッチを、持ってきた。

一件目、三十八分。二件目、四十二分。三件目、三十五分。

数字が、並んだ。

古川は、少し、面白いと、思った。


一週間、古川は、すべての検査を、はかった。

平均は、四十分。

その週は、治具を、置く位置を、変えてみた。右から、左へ。

翌週の平均は、三十七分だった。

三分、縮んだ。

誰にも、言わなかった。ただ、手帳に、書いた。

三分、縮めた。


二週間後、検査結果を、受け取る設計の担当者に、聞いてみた。

「報告書で、読みにくいところは、ありますか」

担当者は、少し、驚いた。

「実は、写真の位置が、分かりにくくて。もっと、前に、あると、助かります」

古川は、翌日から、写真を、前に、移した。

一週間後、その担当者が、言った。

「あれ、助かってます」

古川は、手帳に、もう一行、書いた。

写真の位置。助かると、言われた。


一か月が、過ぎた。

検査室で、古川は、後輩の新人に、治具の位置を、見せていた。

「右より、左のほうが、手が楽なんだ」

新人は、言われた通りに、置いて、頷いた。

「ほんとだ。楽です」

古川は、少し、笑った。

転職サイトは、まだ、開いていない。

つまらない仕事が、急に、楽しくなったわけでは、ない。

ただ、数字と、反応が、あった。

手帳の最後の行に、古川は、書いた。

来月は、検査の手順書を、見直す。

窓の外は、雨だった。缶コーヒーは、まだ、温かかった。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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