悩みのテーマ 中間管理職・板挟み

Story

積算事務所の課長が、上にも下にも「できない」を、初めて言った話

積算事務所 課長・40代後半 人間関係

積算事務所の、課長、大野は、朝、会社の前で、立ち止まった。

足が、動かなかった。

上司からは、毎日、追加の依頼が、来る。

部下からは、毎日、相談が、来る。

全部、自分が、引き受けていた。

「できない」と、言ったことは、なかった。

大野は、ビルを、見上げた。

今日は、入れない。そう思った。

その日は、体調不良で、休んだ。


翌日、大野は、出社した。

心療内科で、少し、休養を、勧められていた。

ただ、会社に、行かなければ、また、仕事が、溜まる。

席に、着くと、部長が、来た。

「大野くん、この見積もり、明日までに、頼めるか」

大野は、口を、開きかけた。

「はい」

そう、答えようとして、止まった。

今、仕事は、三件、重なっている。

「部長、お引き受け、したいのですが」

声が、震えた。


「今、三件が、重なって、います。この件を、受けると、品質が、下がります」

部長は、少し、驚いた顔を、した。

「そうか。どれを、優先すれば、いい」

大野は、一息、ついた。

「A社の、見積もりが、先です。この件は、明後日の、午前中なら、お受けできます」

「分かった。明後日で、いい」

意外なほど、あっさり、通った。

大野は、席に、戻って、手が、少し、震えているのに、気づいた。


その日の午後、部下の、吉井が、相談に、来た。

「課長、この積算の、条件について」

大野は、時計を、見た。

「その相談は、私だけでは、決められない。部長に、確認して、明日の、朝に、返事を、する」

「はい」

「今は、手が回らない。明日の、九時に、時間を、取ろう」

吉井は、頷いた。

「お願いします」


その週から、大野は、事実と、できる範囲と、代わりの案を、セットで、言うことに、した。

半年後、大野の、顔色は、戻った。

仕事の量は、変わらない。ただ、全部を、引き受けなくなった。

大野は、手帳に、書いた。

限界は、早めに、伝える。

その下に、足した。

事実、できる範囲、代わりの案。約束した日に、必ず、返事をする。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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