広げながら絞ろうとして失敗した課長が、発散と収束を分けた話
アイデアを出した端から、「それは難しい」と言われる。広げる時間と、絞る時間を、分けた。
読むStory
家電量販会社の、カスタマーサポート部長、野口は、今期の方針を、掲げた。
「お客様に、寄り添う」
誰も、反対しなかった。
だが、現場は、変わらなかった。
電話は、鳴り続け、折り返しは、遅れる。
部下の、一人が、言った。
「寄り添うって、何をすれば、いいんですか」
野口は、返事に、詰まった。
その夜、野口は、方針に、線を引いた。
寄り添う。
具体的には、何か。
どんな場面で、何をするのか。
いつまでに。
問いを、自分に、繰り返した。
翌日、野口は、書き換えた。
電話は、三コール以内に、取る。
相手の名前を、呼ぶ。
折り返しは、当日の、十八時まで。
大口の、法人顧客、〇〇商事の、問い合わせは、必ず、担当の、小林が、受ける。
抽象的な言葉が、場面と、数字と、固有名詞に、なった。
次の、朝礼で、野口は、言った。
「今期は、三コール以内と、当日十八時の折り返しを、徹底します」
現場から、質問が、出た。
「忙しい日は、どうしますか」
野口は、答えた。
「その時は、チャットに、書いてくれ。人を、回す」
具体になったから、質問が、出た。
役員会では、野口は、別の言葉で、話した。
「顧客満足を、高める投資です。折り返しの、遅れによる、解約が、減ります。年間、二千万円の、効果を、見込んでいます」
高さを、変えた。
役員会は、予算を、承認した。
三か月後、折り返しの、遅れは、ほぼ、なくなった。
野口は、手帳に、書いた。
反対が出ない言葉は、解像度が低い。
その下に、足した。
つまりで、上がる。例えばで、降りる。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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