悩みのテーマ 認知バイアス・ファスト&スロー・行動経済学 関連 お金・家計・将来不安

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機械加工メーカーの部長が、「取り戻せるかも」の賭けを、やめた話

機械加工メーカー 部長・50代前半 お金

機械加工メーカーの、部長、松井は、五年前に、始めた、新規事業を、持っていた。

医療向けの、小さな、部品。

毎年、赤字だった。

役員会で、必ず、聞かれた。

「いつ、黒字になる」

松井は、毎回、答えた。

「来期には、必ず」


ある夜、松井は、後輩の、課長から、本を、借りた。

ダニエル・カーネマンの、『ファスト&スロー』。

プロスペクト理論の、ところで、手が、止まった。

人は、得をする喜びより、損をする痛みを、大きく、感じる。

損を、取り戻せるなら、賭けに、出てしまう。

松井は、胸が、ざわついた。

自分の、ことだ。


翌朝、松井は、紙に、書いた。

今日、ゼロから、始めるとしたら、この事業を、やるか。

答えは、すぐに、出た。

やらない。

では、なぜ、続けているのか。

やめたら、五年分の、赤字が、確定する。

それが、怖かった。


松井は、数字を、並べた。

五年間の、赤字、合計。今後三年の、見込み。

見込みは、毎年、赤字だった。

続けた、場合の、損。やめた、場合の、損。

やめたほうが、小さかった。

松井は、部下に、言った。

「次の半年で、この数字に、届かなければ、やめる」

売上と、受注数。二つだけ、決めた。


半年後、数字は、届かなかった。

松井は、役員会で、報告した。

「撤退します。この事業で、得た、ものも、あります」

医療向けの、検査の、ノウハウ。若手の、設計の、経験。

役員の、一人が、言った。

「早く、決めてくれて、助かった」


事業に、かけていた、三人は、本業の、新しい、案件に、移った。

半年で、受注が、増えた。

松井は、手帳に、書いた。

損を、取り戻す賭けは、損を、増やす。

その下に、足した。

やめる条件は、始める前に、決める。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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