機械加工メーカーの部長が、「取り戻せるかも」の賭けを、やめた話
損は、確定させたくない。その気持ちが、損を、大きくしていた。
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印刷会社の、部長、中西は、三年前から、新しい、基幹システムの、導入を、進めていた。
費用は、数千万円。
だが、現場は、使いこなせていなかった。
入力が、面倒。画面が、分かりにくい。
結局、現場は、これまでの、エクセルで、管理していた。
中西は、会議で、いつも、言った。
「ここまで、来たのだから」
ある日、若手の、川原が、言った。
「部長、システムは、いつまで、続けますか」
中西は、答えに、困った。
「もう少し、使い込めば、慣れるはずだ」
川原は、静かに、聞いた。
「今日、ゼロから、始めるなら、このシステムを、選びますか」
中西は、その場で、答えられなかった。
その晩、中西は、紙に、書いた。
過去の、費用は、消す。
これから、必要な、費用と、効果だけを、書く。
今後二年の、追加費用。
現場が、使わない場合の、損失。
別の、簡単な、ツールに、切り替える場合の、費用。
並べると、答えは、明らかだった。
翌週、中西は、役員に、報告した。
「導入を、止めます。三年分の、費用は、戻りません。しかし、これ以上、かけても、現場は、使いません」
役員が、聞いた。
「今まで、使った費用は、無駄ですか」
「いいえ。業務の、洗い出しで、現場の、流れが、見えました。次の、ツールの、要件に、使えます」
役員は、頷いた。
次に、導入したのは、小さな、受注管理の、ツールだった。
現場が、一週間で、使い始めた。
中西は、手帳に、書いた。
使った費用は、戻らない。だから、これからの、費用だけで、決める。
その下に、足した。
やめた人を、責めない。やめる条件を、始める時に、決める。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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