自動車販売店の店長が、「さすが」をやめて、見たことを一行で伝えた話
ほめているつもりだった。相手には、何も残っていなかった。
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課長の吉田は、面談室で、部下の石井に、言った。
「今期は、まあ、いろいろあったけど、よく、頑張ってくれたと思うよ」
石井は、笑顔で、頷いた。
「ありがとうございます」
吉田は、安心した。
低い評価を、つけていた。それは、言いにくかった。だから、「いろいろあった」と、ぼかした。
二か月後、評価の結果の通知が、人事から石井に、届いた。
石井は、翌日、吉田に、言った。
「課長。通知を、見ました。期待の水準に、届いていなかったと書いてあります」
「ああ、うん」
「面談では、よく頑張ったと、言われました」
吉田は、言葉を、探した。
「あれは、その、努力は、認めているという意味で」
「では、何を直せばよかったのでしょうか」
吉田は、答えられなかった。
その夜、吉田は、手帳に、四つの項目を、書いた。
結果。基準。事実。次の一手。
翌週、吉田は、石井を、もう一度、面談室に、呼んだ。
「先日の話を、やり直させてほしい」
石井は、静かに、頷いた。
「今期の評価は、期待の水準に、届きませんでした。これを、先に、言うべきでした」
石井の表情は、変わらなかった。
「基準は、設計の納期です。十件のうち、六件が、予定通りでした。遅れた四件は、遅れる見込みを、事前に、聞いていませんでした」
「はい」
石井は、手帳を、開いた。
「次の期は、遅れそうな時点で、前日までに、私に相談してください。月に一度、進み具合を、一緒に見ます」
石井は、少し、考えてから、言った。
「事前に言うのが、怖かったんです。遅れを、責められると思って」
吉田は、息を、吐いた。
「責めない。遅れることより、知らないことのほうが、困る」
一か月後、石井が、言った。
「課長。この案件、予定より、三日、遅れそうです」
「分かった。原因は」
「図面の確認に、時間がかかっていて」
吉田は、聞いた。対策を、二人で、決めた。
半年後の面談で、吉田は、結果から、言った。
「今期の評価は、期待の水準に、届きました」
石井は、小さく、頭を下げた。
「事前の相談が、早くなった。それが、大きい」
吉田は、手帳を、閉じた。
四つの項目は、次の面談にも、使うつもりだった。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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