旅行会社の営業課長が、夜の気がかりを紙に出して、朝九時に回した話
考えないようにするほど、頭は冴えた。紙に出したら、少し静かになった。
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課長の村井は、納品書の数字を、二度、見直した。
発注数が、一桁、多かった。
千個のはずが、一万個になっていた。
取引先の、倉庫に、すでに、届いている。
頭が、真っ白になった。
指先が、冷たくなった。
村井は、深く、息を吸った。
紙を一枚、取り出した。
事実を、三行、書いた。
発注数を、千個のところ、一万個で入力。昨日の夕方、出荷済み。取引先の倉庫に、納品済み。
文字にすると、少し、見え方が、変わった。
影響は、誰に。取引先の倉庫の、スペース。返品の、手間。費用。
村井は、立ち上がった。
部長のところに、行った。
「発注ミスを、しました。数量が一桁、違っていました」
部長は、顔を上げた。
「いつ、気づいた」
「いま、です。納品済みで、取引先の倉庫に、あります」
「対応は」
「取引先への連絡と、返品の手配を、いまから、進めます。一時間後に、状況を、ご報告します」
部長は、頷いた。
「分かった。私も、同行する」
取引先の担当者に、電話した。
村井は、事実と、対応を、順に、話した。
「発注数量の入力を誤り、千個のところ、一万個を納品しました。ご迷惑をおかけしております。差分の九千個は、明日の午前までに、回収します。費用は、弊社で負担します」
言い訳は、しなかった。
担当者は、少し、黙って、言った。
「分かりました。連絡が、早くて、助かります」
夜、村井は、自宅で、ノートを、開いた。
反省は、後にした。
明日やることを、三つ、書いた。
朝一で、回収の車を、手配する。経理に、費用の報告を、する。再発防止は、来週、考える。
書き終えると、少し、肩の力が、抜けた。
風呂に入り、早めに、眠った。
一週間後、村井は、確認の手順を、一つ、足した。
発注の入力のあと、別の人が、数量を、読み上げる。
部下の、小林が、言った。
「課長、これなら、私も、安心です」
村井は、頷いた。
ミスは、消えない。ただ、人格の問題では、なかった。手順の問題だった。
手帳の最後に、村井は、書いた。
事実。対応。謝罪。再発防止。順番を、間違えない。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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