検査課長が、「大したことではないのですが」に、ありがとうと言った話
その一言は、いつも、小さな声だった。受け止め方で、次の報告が、変わった。
読むStory
鉄工所の、課長、竹内は、新しい、溶接の、設備を、導入したかった。
社長に、説明した。
「この設備は、成功率、九割です」
社長は、しばらく、考えてから、言った。
「うん。いいんじゃないか」
その、帰り道、竹内は、モヤモヤした。
九割、成功と言ったが、一割は、失敗する。
社長は、そこを、考えたのだろうか。
翌日、現場の、ベテラン、桜井が、言った。
「課長、あの設備、失敗が、一割も、あるんですか」
竹内は、驚いた。
「成功率が、九割、だ」
「同じことでしょう。十台に、一台、不良が、出る、ということですよね」
竹内は、黙った。
社長には、成功率で、現場には、失敗率の、感じ方で、受け止められた。
フレーミング効果。
同じ事実でも、枠が、違うと、印象が、変わる。
竹内は、資料を、作り直した。
成功率、九割。失敗率、一割。
十台のうち、九台は、問題なし。一台は、再加工が、必要。
再加工に、かかる、時間は、一台あたり、一時間。
現状の、手作業では、不良が、十台に、二台出る。
並べると、見え方が、変わった。
現場の、会議で、説明した。
桜井が、言った。
「一割の、失敗が、出ても、今の二割より、いいのか」
「そうだ。二台が、一台に、減る」
「それなら、悪くない」
別の、若手が、聞いた。
「失敗の、一台を、減らす、ことは、できますか」
竹内は、頷いた。
「設備の、設定で、できるかもしれない。一緒に、試そう」
導入は、現場の、納得の、もとで、進んだ。
竹内は、手帳に、書いた。
成功率だけで、語らない。失敗率も、一緒に、見せる。
その下に、足した。
言い方で、人は動く。だから、事実を、変えない。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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その一言は、いつも、小さな声だった。受け止め方で、次の報告が、変わった。
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