化学メーカーの品質管理課長が、説明会で白い紙を回した話
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読むStory
運送会社の所長、森田は、朝の点呼で、時計を、見た。
運転手の、村井が、また、来ていない。
七分後、村井が、息を切らして、入ってきた。
「すみません」
森田は、何も、言わなかった。言えば、また、きつい、言い方に、なる。
今月、五回目だった。
注意は、これまでに、三回、した。
「遅刻するな」「気を引き締めろ」「他の者に、示しがつかない」
村井は、そのたびに、頭を、下げた。そして、翌週には、また、遅れた。
森田は、事務所で、ため息を、ついた。
総務の、竹下が、声を、かけた。
「所長、遅刻の日付を、表にしましょうか」
表を、見て、森田は、気づいた。
遅れる日は、月曜と、木曜に、偏っていた。
その日の、午後、森田は、村井を、会議室に、呼んだ。
「今月、五回、始業に、間に合っていない。平均で、八分の遅れだ」
村井は、うつむいた。
「朝の点呼が、途中からに、なる。周りが、フォローに、回っている」
「はい」
森田は、一呼吸、置いて、聞いた。
「朝は、体調が、つらいか。それとも、通勤の、事情か」
村井は、少し、黙った。
「通勤の、事情です」
「聞かせてくれ」
「母の、デイサービスの、送りが、月曜と木曜で。バスの、時間が、ずれると」
森田は、はっとした。
介護だった。
森田は、責める言葉を、飲み込んだ。
「話してくれて、ありがとう。今後は、どうしていきたい」
村井は、少し、考えて、言った。
「始業を、三十分、遅らせて、もらえれば。その分、帰りを、遅くします」
森田は、頷いた。
「人事に、確認する。二週間、試して、みよう」
二週間後、遅刻は、ゼロだった。
月曜と木曜の、勤務時間を、調整する、制度が、使えた。
森田は、手帳に、書いた。
注意の前に、事実と、影響。それから、理由を、聞く。
その下に、足した。
本人の言葉で、決めた約束は、守られやすい。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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