化学メーカーの品質管理課長が、説明会で白い紙を回した話
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読むStory
先輩の窪田は、主任の木下の席に、毎日、来た。
「その資料、俺なら、こう作る」
「その価格設定は、昔、失敗した」
木下は、そのたびに、「はい」と答えた。一度も、断らなかった。
自分の担当の仕事なのに、判断が、いつも窪田に戻ってくる。木下は、夜になると、疲れていた。
ある日、同期に、愚痴をこぼした。
「あの人、老害だよな」
同期は、少し顔を曇らせた。
「それ、窪田さんの前で、言うなよ」
その週末、木下は、自分の言葉を、思い返した。
「老害」と言った。それは、窪田を、年齢で、切り捨てる言葉だった。
窪田が、困っているのは、事実だった。ただ、窪田は、悪意で、口出しをしているのではなかった。
木下は、紙に、書いた。
認める。確かめる。提案する。線を引く。
翌週、窪田が、新製品の価格表を、覗き込んだ。
「その価格、昔、失敗したぞ」
木下は、手を止めた。
「そういう経緯が、あったんですね」
窪田は、少し、驚いた顔をした。
「その時のポイントを、今回に当てはめると、どこでしょうか」
窪田は、しばらく考えて、言った。
「競合との価格差だな。あの時は、二割、安く出して、利益が、残らなかった」
「分かりました。今回は、競合との差を、一割以内に、絞ってみます。まず、一シーズンだけ、試します」
窪田は、頷いた。
「それなら、いいんじゃないか」
その日の夕方、窪田が、別の資料のことで、また、席に来た。
「それは、こうしたほうが」
木下は、メモを取った。
「参考にします」
窪田は、少し、黙った。
「……そうか」
それ以上は、言わなかった。
木下は、資料を、自分の判断で、仕上げた。窪田の案は、一部だけ、取り入れた。
月末、窪田が、言った。
「お前の価格設定、悪くなかったな」
木下は、頷いた。
「先輩の話を聞いて、競合との差を、見直しました」
窪田は、少し笑った。
「そうか」
木下は、手帳に、小さく書いた。
聞くことと、従うことは、別。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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人間関係の話を先に並べています。
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読む五百円払えば、それで済む。そういう顔が、増えた。
読む悪い報告は、いつも、夕方に来る。
読む全部引き受けるのが、課長の仕事だと思っていた。
読む愚痴なら、毎日言っていた。
読む三ページ読んでも、何をしてほしいのか分からないと言われた。
読む言ったつもりだった。伝わったのは、機嫌だけだった。
読む質問は、聞くための道具だと思っていた。
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