悩みのテーマ ハラスメントの見分け方・対処

Story

食品スーパーの主任が、毎日の叱責を、四つの項目で記録した話

食品スーパー 主任・30代後半 人間関係

売場の朝礼で、店長が、主任の杉田の名前を呼んだ。

「杉田、お前は、本当に、使えないな」

店内の準備をしていた従業員たちが、一瞬、手を止めた。

「在庫の数字、また、間違えているだろう。小学生でも、できる仕事だ」

杉田は、頭を下げた。

「申し訳ありません」

声が、少し、震えていた。


その日の夜、杉田は、眠れなかった。

同じようなことは、三か月、続いていた。人前で、大きな声で。名前を呼ばれて、人格を、否定される。

我慢すれば、済むと思っていた。辞めるしか、ないのだとも。

翌朝、杉田は、通勤の電車で、スマホのメモを開いた。

四つの項目を、作った。

日時と場所。言われた言葉。周りにいた人。自分への影響。


その日から、杉田は、叱責のあった日に、四つを、書いた。

十月八日、朝礼、売場前。「お前は、使えない」「小学生でもできる」。周りに、パートの田村さんと、新人の中川さん。眠れない。出社前に、胃が痛い。

書くたびに、杉田の胸の中の、霧が、少しずつ、形になった。

自分が、おかしいのではない。起きていることが、あるのだと、思った。


三週間分の記録が、たまった頃、杉田は、会社の相談窓口に、連絡した。

担当の人事の女性は、記録を、静かに、読んだ。

「これは、記録を残して、持ってきてくださって、助かります」

杉田は、少し、息をついた。

「正式な調査に、進めるかどうかは、これから、確認します。その間、店長との距離を、取れるように、配慮します」

「ありがとうございます」

人事の担当者は、続けた。

「もし、社内の対応に、不安があれば、外部の窓口もあります。都道府県の労働局の、総合労働相談コーナーは、匿名でも、相談できます」

杉田は、メモに、その名前を、書いた。


結果が出るまでには、数週間かかった。

その間、杉田は、記録を、つけ続けた。体調が悪い日は、休んだ。

結局、店長は、別の店舗に、異動になった。

杉田は、その理由を、詳しくは、聞かなかった。

新しい店長は、朝礼で、全員の名前を、静かに呼んだ。

杉田は、スマホのメモを、閉じた。

四つの項目は、しばらく、消さなかった。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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