悩みのテーマ 1on1のやり方

Story

百貨店の売場課長が、1on1を三回延期して、部下に「もういいです」と言われた話

百貨店 売場課長・40代前半 人間関係

「ごめん、今週も、難しい」

売場課長の岡田は、バックヤードで、部下の佐々木に、声をかけた。

売場は、週末の催事の準備で、手が回らなかった。1on1は、月に一度、決めていた。今月は、まだ、一度もやっていない。

佐々木は、少し間をおいて、頷いた。

「大丈夫です」


翌週も、延期した。その次の週も。

三回目の延期のとき、佐々木は、頷かなかった。

「もう、いいです」

岡田は、顔を上げた。

「いい、というのは」

「話したいことが、あったんです。でも、三回、延びたので。もう、整理がつきました」

佐々木の声は、静かだった。怒ってはいなかった。

それが、かえって、岡田の胸に、重く残った。


その夜、岡田は、手帳を開いた。

1on1の欄に、延期、延期、延期と、書いてあった。自分の字だった。

三十分を取ろうとするから、取れなかった。そう思った。

翌朝、岡田は、佐々木の席の横に立った。

「毎週、水曜の十時に、十五分。バックヤードの端でいい。その時間は、必ず空ける」

佐々木は、少し驚いた顔をした。

「十五分で、足りますか」

「足りなければ、翌週に続ける。毎週、やる」


最初の水曜、岡田は、十時ちょうどに、バックヤードに立った。

佐々木は、来た。

「前日に、一行送ってほしいと言っていましたが」

「うん。何と書いた」

「催事のあとの、シフトのことです」

十五分で、シフトの話は、終わった。岡田は、メモを取り、次の週の水曜までに、店長に確認する、と約束した。


翌週の水曜、岡田は、最初に、報告した。

「店長に聞いた。来月からは、変えられる」

佐々木は、頷いた。

そのあと、別の話が、出た。三回延期されたときに、整理がついた、と言っていた話だった。

「実は、異動の希望を、出そうか迷っていたんです」

岡田は、メモを取る手を、止めなかった。

十五分は、少し足りなかった。翌週に、続きをやることにした。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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