悩みのテーマ 中間管理職・板挟み

Story

印刷会社の課長が、二転三転する部長の指示を、確認メモで止めた話

印刷会社 課長・40代後半 人間関係

印刷会社の課長、柴田は、朝から、ため息を、ついていた。

部長が、昨日、決めたはずの、パンフレットの仕様を、変えてきた。

「やっぱり、紙は、もう少し厚くしたい」

柴田は、頷いた。

「分かりました」

席に戻ると、部下の、早川が、待っていた。

「課長、また、変わったんですか」


早川の、声には、疲れが、混ざっていた。

「紙は、先週、注文を、済ませました。厚いのに変えると、また、発注し直しです」

柴田は、言葉に、詰まった。

「部長に、言ってみる」

「言えますか」

早川は、責めて、いなかった。ただ、確かめるように、聞いた。

柴田は、答えられなかった。

部長に、言い返すのが、怖かった。


その夜、柴田は、過去の、一か月を、振り返った。

指示が、変わったのは、四回。

どれも、口頭だった。どれも、柴田は、「分かりました」と、返していた。

変わった理由を、聞いたことは、一度もなかった。

柴田は、メモ用紙に、書いた。

文字に、残していない。理由を、聞いていない。影響を、伝えていない。

三つ、足りなかった。


翌日、柴田は、部長の、席へ、行った。

「昨日の、紙の件です。確認させてください」

手には、一枚の、メールの、下書きが、あった。

「厚い紙に、変更する。納品は、変わらず、金曜。この内容で、よろしいですか」

部長は、画面を、見た。

「ああ、それで、いい」

「一点、お伝えします。紙の発注が、先週、済んでいます。変更すると、追加費用が、四万円。納期は、二日、遅れます」

部長は、少し、黙った。

「何か、状況が、変わりましたか」

柴田が、聞くと、部長は、目を、そらした。

「実は、先方の、担当が、変わってな。高級感を、出したいと、言われたんだ」


理由を、聞いて、柴田は、初めて、分かった。

部長は、気まぐれで、変えて、いたのでは、ない。先方の、要望を、受けていた。

「それなら、最初から、先方に、仕様を、確認する場を、作りませんか。毎週、月曜に、十分だけ、私と、部長で、方針を、決める」

部長は、頷いた。

「それは、助かる」


その週から、月曜の、十分間が、始まった。

決めた仕様は、柴田が、メールに、残した。次の週まで、変えない。そう、お願いした。

部長も、変更を、思いつくと、月曜まで、待つように、なった。

一か月後、早川が、笑って、言った。

「課長、今月は、仕様が、変わっていません」

柴田は、手帳に、書いた。

指示は、文字に、残す。理由を、聞く。影響を、示す。

その下に、足した。

振り回されたのは、確認しなかった、自分でもあった。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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