化学メーカーの品質管理課長が、説明会で白い紙を回した話
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
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班長の岡本は、ラインの前で、腕を組んでいた。
ベテランの田村が、新しい洗浄手順を、守っていなかった。
先月から、変更になった手順だった。岡本は、三回、伝えた。
「前のやり方で、いいんだよ。長年、これでやってる」
田村は、そう言って、前の手順で、洗浄を、続けた。
岡本は、腹が立った。反抗している、と思った。
その夜、岡本は、手帳に、書いた。
理解していない。納得していない。感情で、拒んでいる。
三つのうち、どれか。
翌朝、岡本は、田村に、聞いた。
「新しい手順を、自分の言葉で、言ってみてもらえますか」
田村は、少し、驚いた。
「洗剤を、二回に、分ける。それから、水で、流す」
「そうです。一つ、抜けています。最初の、予洗いが」
田村は、頷いた。
「ああ、そこは、聞いてなかったかもしれない」
理解は、ほぼ、していた。一か所、ずれていただけだった。
次に、岡本は、聞いた。
「新しい手順で、引っかかるところは、ありますか」
田村は、腕を組んで、少し、黙った。
「洗剤を、二回に分けると、時間が、五分、延びる。その五分、ラインが、止まる」
「はい」
「前は、止まらなかった」
岡本は、メモを取った。
「五分、止まることが、気になるんですね」
「そうだ。それを、誰も、聞いてくれなかった」
岡本は、静かに、頷いた。
納得していなかった。理由が、伝わっていなかった。
翌日、岡本は、品質管理に、確認した。
洗浄を二回に分ける理由は、先月の、異物混入の件だった。
岡本は、田村に、そのまま、伝えた。
「先月、他のラインで、異物の件があった。それで、洗浄を、二回にした。五分の延びは、予定に、織り込んである」
田村は、少し、考えて、言った。
「そういう話だったのか」
「最初に、説明すべきでした」
田村は、頭を、掻いた。
「分かった。やる」
その日から、田村は、新しい手順で、洗浄を、続けた。
三日後、田村は、ラインの新人に、言っていた。
「ここは、五分、延びるけど、理由が、あるんだ。聞いて、おけよ」
岡本は、離れたところで、聞いていた。
反抗では、なかった。
止まっていたのは、納得の、手前だった。
手帳に、岡本は、書いた。
聞かない、と決める前に、三つに分ける。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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