悩みのテーマ 対応に悩む社員・遅刻・指示を聞かない

Story

水道設備会社の課長が、遅刻の「理由」を聞く前に、事実を表にした話

水道設備会社 課長・40代後半 人間関係

課長の長谷川は、朝礼の十分前に、また、時計を見た。

若手の三浦の席は、空いていた。

三浦の遅刻は、これで、何度目だろう。長谷川は、数えていなかった。

八時五十八分、三浦が、息を切らして、入ってきた。

「すみません」

「また、ぎりぎりか」

長谷川は、つい、声を、強くした。

「何回言わせるんだ。やる気が、ないのか」

三浦は、うつむいた。


その夜、長谷川は、ふと、考えた。

何回、遅れたのだろう。思い出せなかった。

感覚で、怒っていた。それでは、本人にも、何も、伝わっていない。

翌朝、長谷川は、タイムカードの記録を、三か月分、出した。

遅刻、九回。そのうち、連絡なし、六回。月曜が、五回。

表にして、並べた。月曜日が、多い。


面談の日、長谷川は、表を、机に置いた。

「過去三か月の、遅刻の記録だ」

三浦は、表を、見つめた。

「九回。連絡がなかったのは、六回。始業は八時三十分。遅れそうなときは、事前に連絡をもらう決まりだ」

三浦は、頷いた。

「事情を、聞かせてほしい。何か、困っていることは、あるか」

三浦は、しばらく、黙っていた。

「月曜の朝は、母を、病院に、連れて行っていて」

長谷川は、メモを取る手を、止めた。

「お母さんの、通院か」

「はい。言っていませんでした」

「いつから」

「三か月前からです。月曜の朝に、診察が、あって」

長谷川は、息を、吐いた。

怒鳴っていた自分を、思い出した。


「分かった。まず、決めたい」

長谷川は、紙に、書いた。

「月曜の朝は、始業を、九時にしよう。その代わり、終業は、三十分、遅くする。遅れそうなときは、始業の三十分前までに、メッセージで連絡する」

三浦は、顔を、上げた。

「いいんですか」

「事情が、分かれば、仕組みで、調整できる。ただ、連絡は、必ず、してほしい」

「はい」

長谷川は、面談の内容を、短く、メールに書いて、三浦に送った。


二週間後、月曜の朝。

八時前に、三浦から、メッセージが、届いた。

「今日は、通院のため、九時出社です」

長谷川は、画面を見て、返信した。

「了解」

それだけだった。

九時に、三浦は、席に着いた。

長谷川は、手帳の隅に、書き足した。

感覚で、怒らない。事実を、表にする。

その下に、小さく、書いた。

理由は、三番目に、聞く。

この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。

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