化学メーカーの品質管理課長が、説明会で白い紙を回した話
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読むStory
課長の山田は、人事部の会議室で、資料を、広げた。
運転手の村上の、勤務態度についてだった。
遅刻。点呼の無視。同僚への、きつい物言い。
「この一年、何度も、注意してきました」
人事の担当者の中川は、資料を、見た。
「記録は、ありますか」
「記録、ですか」
「いつ、どんな注意を、したか。本人は、何と答えたか」
山田は、言葉に、詰まった。
「口頭で、言ってきました。何度も」
中川は、静かに、頷いた。
「それだと、会社として、対応の根拠が、ありません」
山田は、体の力が、抜けた。
一年の注意が、何も、残っていなかった。
その夜、山田は、家で、考えた。
五つの段階。事実。期待。支援。記録。相談。
山田は、すべて、飛ばしていた。感情で、注意した。残さず、一人で、抱えていた。
翌朝、山田は、中川に、頭を、下げた。
「やり直させてください」
最初の一週間、山田は、事実を、集めた。
点呼の記録。遅刻の日付。苦情の内容。同僚から、聞き取りも、した。
三十件ほどの事実が、表になった。
次に、期待を、決めた。
点呼には、必ず、出る。連絡は、事前に入れる。同僚には、丁寧な言葉で、話す。
その上で、面談の日を、決めた。
面談で、山田は、表を、見せた。
村上は、腕を、組んだ。
「いまさら、何だよ」
「今回は、事実と、期待を、紙にして、渡す。決めたことは、メールでも、送る」
村上は、紙を、眺めた。
少しして、言った。
「点呼のことは、朝が、早すぎて」
「いつから、そうなった」
「半年前に、眠れなくなって」
山田は、メモを取った。
「産業医に、相談できる。会社を通さず、受けることも、できる」
村上は、黙った。
二週間後、村上は、産業医の面談を、受けた。
山田は、すべてを、記録に、残した。
面談の日付。内容。決めたこと。村上の言葉。
三か月後、人事の中川が、記録を、見て、言った。
「これで、次の段階を、判断できます」
山田は、頷いた。
村上の遅刻は、すぐには、なくならなかった。だが、点呼には、出るようになった。
山田は、手帳の最初のページに、書いた。
注意は、言った数ではなく、残した数で、決まる。
その下に、小さく、足した。
一人で、抱えない。早めに、人事に、話す。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
Stories
人間関係の話を先に並べています。
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読む五百円払えば、それで済む。そういう顔が、増えた。
読む悪い報告は、いつも、夕方に来る。
読む全部引き受けるのが、課長の仕事だと思っていた。
読む愚痴なら、毎日言っていた。
読む三ページ読んでも、何をしてほしいのか分からないと言われた。
読む言ったつもりだった。伝わったのは、機嫌だけだった。
読む質問は、聞くための道具だと思っていた。
読む悩みのテーマ