地方新聞社のデスクが、職務経歴書を一晩で書いてみた話
辞めるつもりはなかった。書けるかどうかを、知りたかっただけだった。
読むStory
電機メーカーの課長、中川は、評価面談の、席で、固まっていた。
「中川さんの、今期の、成果は」
部長が、書類を、見ながら、言った。
「納期の、遅れが、ない。大きな、トラブルも、ない。ただ、特に、目立った、成果は」
中川は、返す言葉が、なかった。
今期、中川は、部署間の、調整に、走り回って、いた。
営業と、設計の、板挟み。何度も、衝突を、収めた。
その苦労は、何も、起きなかった、という、結果に、なっていた。
その夜、中川は、考えた。
調整が、成功するほど、何も、起きない。
何も、起きないから、何も、していないように、見える。
翌日、中川は、一年分の、メモを、見返した。
営業が、急な、仕様変更を、頼んできたとき、設計と、調整して、納期を、守った件。
設計が、人手不足を、訴えたとき、他の課から、応援を、引き出した件。
全部で、十二件。
中川は、それを、数字に、した。
三か月後の、月例の、場で、中川は、部長に、五分、時間を、もらった。
「今月は、営業と、設計の、調整を、二件、行いました。仕様変更の、影響で、納期が、二週間、遅れる見込みでしたが、応援を、引き出して、納期を、守りました」
部長は、メモを、取った。
「それは、知らなかった」
「部下の、佐野は、今月、初めて、設計の、見積もりを、一人で、まとめました」
部長が、顔を、上げた。
「それは、いいな」
半年後の、評価面談で、中川は、持っていった。
調整の、記録。納期を、守った、件数。部下の、成長。
部長は、書類を、見て、言った。
「調整の、仕事が、これほど、あったとは」
「見えにくい、仕事ですので」
「評価に、入れよう」
中川は、少し、笑った。
その後も、中川は、月に一回、五分、部長に、伝え続けた。
自慢では、なく、事実の、共有として。
中川は、手帳に、書いた。
調整は、成功するほど、見えなくなる。
その下に、足した。
数字と、記録と、部下の成長で、見える形に、する。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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キャリアの話を先に並べています。
辞めるつもりはなかった。書けるかどうかを、知りたかっただけだった。
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