化学メーカーの品質管理課長が、説明会で白い紙を回した話
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読むStory
電子機器メーカーの課長、大野は、部下の、佐藤に、頼んでいた。
「来週の、設計レビューの資料を、まとめてほしい」
佐藤は、頷いた。
三日後、佐藤が、出してきた資料は、五十ページあった。
大野は、ページを、めくりながら、首を、かしげた。
情報は、すべて、入っていた。ただ、何を決めるための資料なのか、分からなかった。
その夜、大野は、考えた。
自分は、佐藤に、何を、伝えたのか。
資料を、まとめてほしい。それだけだった。
誰が、何を決めるための、資料なのか。何を言っていなかった。
大野は、頭の中では、分かっていた。部長が、設計の方向を決めるために、使う資料。
それを、一度も、口に、していなかった。
翌朝、大野は、佐藤を、呼んだ。
「昨日の資料のことで、頼み直したい」
佐藤は、少し、身構えた。
「目的を、先に、伝えたい。部長が、来期の、設計の方向を、決める。そのために、A案とB案を、一枚で、比べてほしい。部長が、どちらかを、選べる状態に、なれば、完了だ」
佐藤は、メモを、取った。
「今の話を、自分の言葉で、言うと、どうなる?」
佐藤は、少し、考えた。
「部長が、A案とB案の、どちらかを、選ぶための、比較表を、一枚で、作る、ということですね」
「そう。それだ」
佐藤の目が、少し、明るく、なった。
三日後、佐藤は、一枚の資料を、持ってきた。
二つの案が、並んでいた。費用、期間、リスク。
大野は、その資料を、じっと、見た。
「これなら、部長が、すぐ、決められる」
佐藤は、小さく、笑った。
「五十ページの、あの資料は、何だったんでしょうか」
「頼み方が、悪かった」
設計レビューで、部長は、一枚を、見て、言った。
「B案で、進めよう」
会議は、十五分で、終わった。
その後、佐藤は、別の依頼を、受けたとき、自分から、聞いた。
「この資料で、誰が、何を、決めますか」
大野は、少し、驚いた。
「いい質問だ」
大野は、手帳に、書いた。
目的は、一文で、書く。伝えたら、言い直してもらう。
その横に、足した。
作業の前に、目的を、聞く人が、育った。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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