動くべき問題と、待てばよい問題を、課長が三つの問いで切り分けた話
全部に、すぐ動こうとして、疲れていた。待っても、いいものがあると、知らなかった。
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精密機器メーカーの、技術課長、安田は、夜の、八時に、人事の、通知を、見た。
後輩の、中島が、自分より先に、部長代理に、昇格する。
安田が、三年かけて、育てた後輩だった。
胸が、ざわついた。
裏切られた。
そう、思った。
怒りで、手が、震えた。
安田は、中島に、メッセージを、送りかけた。
「おめでとう。ずいぶん、うまく、やったな」
指が、止まった。
これは、祝福では、ない。
安田は、画面を、閉じた。
その代わりに、紙を、取り出した。
真ん中に、線を、引いた。
左に、事実。右に、気持ち。
左に、書いた。
中島が、部長代理に、昇格する。
自分は、課長の、まま。
右に、書いた。
悔しい。
置いていかれた、ようで、恥ずかしい。
育てたのに、報われなかった、ようで、悲しい。
書いているうちに、気づいた。
右の列の、半分は、中島に対する、気持ちではなかった。
自分に、対する、不満だった。
その夜は、結論を、出さなかった。
ぬるい茶を、飲んで、寝た。
翌朝、安田は、紙を、もう一度、読んだ。
左の、事実だけを、見た。
中島は、何も、裏切って、いない。
自分が、育てた通りに、育って、評価された。
それだけだった。
出社して、安田は、中島に、声をかけた。
「昇格、おめでとう」
中島は、驚いた顔で、言った。
「ありがとうございます。安田さんに、教わったことが、全部、役に立ちました」
その言葉は、嘘では、なかった。
安田は、手帳に、書いた。
裏切られた夜は、動かない。
その下に、足した。
事実と気持ちを、二列に、分ける。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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全部に、すぐ動こうとして、疲れていた。待っても、いいものがあると、知らなかった。
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