化学メーカーの品質管理課長が、説明会で白い紙を回した話
全員が、うなずいていた。全員が、分かっていなかった。
読むStory
部長の三宅は、二つの部下に、違う渡し方を、していた。
現場の若手には、具体的に。この図面の、この部分を、この様式で、直す。
直近の部下の、課長の柴田には、抽象的に。
「来期の、業務の進め方を、考えておいて」
若手は、期待通りに、動いた。
柴田は、一週間後、作業の一覧を、持ってきた。
「業務の進め方、ですが、まず、現在の作業を、洗い出しました」
三宅は、首をかしげた。
欲しかったのは、洗い出しではなかった。
その夜、三宅は、自分の頼み方を、振り返った。
考えておいて。それだけ、だった。
目的は。制約は。どんな形で、返してほしいのか。
何も、伝えていない。
柴田が、作業の一覧を、出したのは、当然だった。分かる範囲の、ことをやったのだ。
翌日、三宅は、柴田を、呼んだ。
「先日の件を、頼み直したい」
柴田は、少し、身構えた。
「来期の、残業を、二割、減らしたい。そのための案を、三つ、一枚で、出してほしい。費用は、十万円以内。来月十日まで。各案の効果と手間を、並べてほしい」
柴田は、急いで、メモを取った。
「効果と手間を、並べる、ですか」
「そう。それを見て、私が、決める」
柴田の表情が、変わった。
「分かりました。これなら、動けます」
三割の時点で、三宅は、声をかけた。
「今、どんな視点で、考えている」
柴田は、ノートを、見せた。
「人手の配分、会議の削減、書類の電子化の、三つです」
「会議の削減は、効きそうだな。具体的に、どこを」
「定例会議を、三つ、まとめられると思います」
三宅は、頷いた。方向は、合っていた。
来月十日、柴田は、一枚の資料を、持ってきた。
三つの案。効果と手間が、並んでいた。
三宅は、会議の削減の案を、選んだ。
柴田が、小さく、息を、吐いた。
「ありがとうございます。考えるのが、楽しかったです」
三宅は、少し、驚いた。
「前回は、すまなかった。頼み方が、悪かった」
柴田は、笑った。
「次は、目的から、一緒に考えたいです」
三宅は、手帳に、書いた。
抽象度は、一段ずつ、上げる。目的、制約、形を、渡す。
この物語はフィクションです。実在の人物、団体、企業とは関係ありません。
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